長谷川 豊


今日ここに7月17日(水)発売の chietronix aka 大高ジャッキー、厳密には chietronix、大高ジャッキー名義を全部含めると(配信のみとか)10作目にあたる2枚組CD「The Second Summer of Love」
のジャケット表面だけを発表する。

実はこのアルバムのジャケット・ワークは決まっていた。オレ様と奥さんで共同に作ったものだ。
それも悪くはなかった。

しかし、彼の存在がオレ様の未来を変えた。その人物とは・・・

長谷川 豊

オレ様は、10代後半に St.Panchos と言う今でも仲良くしているジャグバンドのメンバーだった。
リーダーの ramuchi2000GTくんとは、2000年代に ウンシャオール・チンシャオール・チチと言うボサノバ・ユニットを組み、場末のバーなどで強力なインプロヴィゼーションを噛ましていた。

St.Panchos は、このブログでも触れた事があるが、イカ天の次の番組、三宅裕司の天下ご免ね、と言う番組で審査委員の萩原健太に特別賞を貰い、2週連続して出演した。

St.Panchos は、当時オレ様が持っていたカセットテープの4trのMTR(多重録音機)によって、ビートルズ、クイーン顔負けのオーバー・ダビングを重ね、3枚のオリジナル・アルバムを残している。

ある日、ミックスの件で ramuchi2000GTくんが仕事で忙しく欠席したので、オレ様、長谷川さん、長野さん(牛若さん)の3人で、三軒茶屋スタジオに集まって、話していた。

牛若さんが、「大高くん、今テクノってアンビエントとかが盛り上がって来ていて面白いんだ。The OrbのCD持ってるから聴いてみない?」と言われ、その場で聴いてみた。

今までギター小僧だった、アコースティック専門のオレ様にとって、テクノは摩訶不思議な音楽だった。それも最初っからアンビエントに入った訳だ。

「アンビエント・・・深い・・・どうやったらこんな音楽が作れるんだ?」
カルチャー・ショックを受けた。

長谷川さんが「外の鳥の鳴き声とかも The Orb に聴こえる」と、とんでもない事を言い出し、オレ様は決めた。

「何が何でもテクノを極めてやろう」と。

機材を買い始めた。中でも一番苦労したのは、TB-303。これについては以前のブログで触れている。

そして、長谷川さんと牛若さんと3人で、ボサノバ兄弟と言うテクノ・ユニットを組んだ。
毎週末、お互いが買ったテクノのレコードやCDなどを持ち合い、オレ様の三軒茶屋スタジオにて、徹夜で1日で一曲作ると言うお題で半年ぐらい続けた。

もう、毎週末がオレ様にとって勉強だった。
それまでアコースティック専門だったオレ様、テクノのテの字も知らないひよっこに、長谷川さんと牛若さんは、一言もバカにすることなく丁寧に教えてくれた。

St.Panchos とボサノバ兄弟の音源は、カセットテープがマスターだが、デジタルとして録り込んで、ノイズ除去にも時間をかけたし、「The Second Summer of Love」の次に St.Panchos、その次にボサノバ兄弟のアルバムを Poison Girls Records よりリリースする予定で、それが終わったら、レーベルとしての運営は事実上終わりにする。

本当は「The Second Summer of Love」をリリースするのではなく、ボサノバ兄弟をリリースする予定で、プレゼンも済み、後は流通会社が動いて、プレスして、と言う流れだった。

でも、それはオレ様の独走的な考えであった。
今から13年前に牛若さんは病でこの世を去り、St.Panchos のメンバーたちも家族を持ったし、毎年8月の命日近くなる週末にみんなで集まって、牛若さんを想う「牛の日」と言う飲み会を開いていたが、長谷川さんも行方が分からなくなってしまった。

しかし、彼が1999年から Java Script でフラッシュの実験をした自身のホームページ「PULS & TON」は、2003年ぐらいに ramuchi2000GT くんからURLを教えてもらって見ていた。

それは、摩訶不思議な迷路の様なリンクの作りになっていて、クリックしても何にも動かないものもあり、勝手に犬のパラパラ漫画が始まったり、その時にサポートでやっていたバンドがホームページを作ると言う事で、その女に長谷川さんのURLを送ったら「天才の成せる技だ」と言っていた。

しかし、オレ様のおんぼろヒューレット・パッカードのノートPCは壊れ、リカバリーも出来ない状態になり、ゴミとなって消えた。長谷川さんのURLも忘れてしまった。

ボサノバ兄弟を出すにあたって、牛若さんの母親と奇跡的に連絡が取れ、St.Panchosの牛若さんを想って作った「Young Cow Box」を送ってあげ、同意を得たが、長谷川さんがどう思うかは謎だった。

ramuchi2000GT くんにもう一度URLを聞き出し、現在は「高井戸インターテインメント」と言うサイトに名前が変わり、フリーランスで webデザイン、DTP の仕事をしている事までは分かった。

高井戸インターテインメントには「お問い合わせフォーム」と言う機能があり、恐る恐る10年以上ぶりに連絡をしてみた。St.Panchos とボサノバ兄弟の音源も送った。

なかなかにして返信が来ないと言う長谷川さんから、すぐに返信があり、St.Panchos とボサノバ兄弟の事にも発言を貰ったと同時にリリースの同意も得た。そして、「Young Cow Box」とオレ様の chietronix名義の作品を送った。

それから何週間か経った後、長谷川さんに電話してみた。すごく元気そうで嬉しかった。
父親の会社「株式会社大高商店」のホームページの仕事も依頼してみた。
しかし、高井戸インターテインメントの factory のページを見てみると、
内容とセンスが飛び抜けちゃっていてすご過ぎた。

オレ様が「The Second Summer of Love」の音源発掘にどれだけのエナジーを注いだか。もはや分かるヤツにだけ分かってもらえれば良い。

長谷川さんも自分のホームページを自身の師としているスペインの web デザイナー・チームにメールしたら、返信が来て、文字化けだらけの文章の最後に「GOOD」と書いてあって、「コイツらに認められれば良い。やったかいがある」と悟ったらしい。
その長谷川さんに「The Second Summer of Love」のジャケット・ワークをお願い出来ないかと考えた。
そして、すぐにメールで伝えた。携帯にも電話した。

しかし、長谷川さん的には「いろいろ次からリクエストが来てこまるですよ」との事で、まずは、音源を聴いてみて、
自分的に余裕があったら考える、と言う返事を頂いた。

それからは待った。待って待って待った。もうその事を忘れてしまう、と思った時に、長谷川さんから返信が来て、
「やります」と書いてあった。

そこからは、メールでやり取りをし、音源が「発掘盤」的である、と言うアイデアを貰うのと同時に、PULS & TON 時代と今とは違う、
との事で、現在の長谷川さんのスタイルも好きだったし、スケジュールも出してくれたので、そこからも待った。

すごく嬉しかった。もはやお金の問題ではない。

その間、長谷川さんは一言も苦労したと言う様な事は一切言わず、最近の口先野郎どもに爪の垢を煎じて飲ませてあげたいぐらいだが、こんな感じで良いだろうか?と言って送ってくれたジャケット・ワークが、一体どの様に良い意味でオレ様や奥さんの期待を裏切ってくれるのかを楽しみにしていたのだが、秒殺でやられてしまった。まさに「天才」であった。

長谷川さんは、自分でクリエイトしながら、
その作品を自分でプロデュース出来る能力&実力を世界レベルで持っている。何と言ってもデザインが「可愛い」のだ。

「可愛い」と言う言葉は、よく女子どもが「カワイイ~」と吐かす安臭いものとは違う。きっと潜在的に持っている能力に磨きをかけたのだと思う。
サウスポーである長谷川さんの右脳と左脳の使い方が我々凡人とは、最初っから逆説であり、世間はその素晴らしい才能を認めようとはしなかった。

なぜなら、全てを理解し、そのアカデミックを・・・アカデミックとは一度完璧に習得して、自身の中でそれをぶち壊して初めて自分のものになる、と言うのが本当のオレ様の理論の結論だが、長谷川さんの努力して築き上げた才能を世の中が認めてしまったら、世の中はひっくり返ってしまうだろう。

これから世の中はひっくり変るだろう。しかし彼は言う「オレは裏方だから」と。
オレ様の作品がずば抜けて売れるとも限らないが・・・
それでも彼は言った。

「年齢が上がるにつれて選択肢はせばまっていくかもしれないけど、
 何歳になってもやり直せるような世の中じゃなくちゃ、困っちゃうよ」

この一言にオレ様は励まされた。実際にオレ様世代で生き残っているバンドやアーティストたちって、実際にふたを開けてみると大した事ないし、またオレ様世代より下の世代ですごいヤツら、面白いと共感出来るヤツらは現れてはいない。それだけは確かだ。だから今の音楽はつまらないのである。

実際に、トリビュート盤、ベスト盤ばかりリリースして、現在の新曲では勝負出来ない、明らかに煮詰まっているヤツらはすぐに分かる。そんなヤツらがこの音楽シーンを牛耳っているのだ。騙されるな。

裏ジャケットや、インナーのデザインは、CDを買ってくれた人にしか味わえない様に秘密にしてある。

しかし、これだけの事を、仕事としてもだ、スケジュールの一週間前に終わらせてしまう長谷川さんの才能、努力、そしてセンスには正直ぶったまげた。はい、参りました。

ここ何年かのオレ様の回りには、口先ばかりで、蘊蓄や理屈ばかりが饒舌で、サンレコを読んだ通りにしか学んでいない(サンレコなんて糞だと思ってる)、自分の曲で勝負しない、いわゆる「胡散臭い連中」が多かっただけに(オレ様はその胡散臭い連中は、友達としても自分のキャリアを利用されているようで気に喰わないのでバッサリと縁を切る)、本当にすごい人は、口先だけではなく、自身の作品でドーンと噛ましてくれる、それが長谷川さんだった。

ジャケット・ワークの表面も今回公開したが、画像解像度を荒くしてある。本当に直接見たい人はCDを買えば良い。

オレ様も「The Second Summer of Love」の内容に付いて、ビッグマウス的な発言はしていないつもりだ。だが、今から23年前・・・ドラッグもタバコも知らない一人の青年が、夢中になって毎晩徹夜でよくもここまで作ったもんだ、と思う。
それが7月17日にみんなの手に届くだろう。

この作品は、オレ様のものだけではなく、オレ様と長谷川さんのコラボレーションだ。

みんなは長谷川さんのサイトに飛んで、彼のすごさを知れば良い。ここにリンクを張っておく。


長谷川さん本人は「何年かに一本ホームランを打てる」と言っていたが、今回の作品は、間違いなく、彼のホームランだ。

オレ様たち St.Panchos とボサノバ兄弟は最強だった。どんなジャンルも飲込んで演って来た。
ライブも毎回全曲新曲か、新アレンジだったし、メンバーたちは各自少なくとも3つは楽器を演奏出来た。

そのすごさを、これから時間をかけてゆっくりと、その秘密のベールを明かして行く。

仕事が早くてセンスの良い表現者は腐るほどいる。しかし、その中で「あか抜けちゃってる人」は、実はいそうでいない。

この世の中に「出来ない」なんて言う単語はない。不可能な事なんてないのだ。
そいつがやらないだけだ。
オレ様が真剣に演奏している前で「出来ない」とビールを飲みながら開き直ってる野次馬根性は、正直言って死ねば良い。

世の中に「本物」として評価される人は、もう一度書くが、口先野郎ではない。

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